第1章 ブラック勤務

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いいともなんと言っていないのに、席を立った田辺課長は私の肩を掴み、強引に回れ右をさせた。 そのままぐいぐいと肩を押して部屋の外にまで連れ出し、エレベーターのボタンまで押してしまった。 「鶴沢君には僕からよーく言っておくから、気にしないでゆっくり三日間、休んで。 ね?」 まもなくエレベーターが到着し、中に押し込まれる。 「じゃあ、ゆっくり休んでねー」 満面の笑顔で手を振る田辺課長を最後に、ドアが閉まった。 ……はぁーっ。 またやられた。 毎回毎回、そうなのだ。 この話題になると田辺課長はあの手この手でのらりくらりとかわし、誤魔化してしまう。 本当に食えない狸で、私はちょっと苦手だったりする、田辺課長が。 それにしても。 そんなに私があいつの補佐を外れることに支障があるんだろうか。 いや、社内には私より優秀な人間はたくさんいる。 鶴亀と縁起のいいコンビニ固執しているなら、異常としかいいようがない。 「これから、どーしよーかなー」 ぎりぎりに起きて朝食を取っていなかったから、近くのカフェに入る。 こんな時間にカフェオレにサンドイッチ、ヨーグルトの朝食は優雅だ。 「……そだ」 いそいそとバッグから携帯を出し、画面に指を走らせる。 【今日、休み取れた。 仕事終わってから会えないかな。 昨日のデートのやり直し】 スモークサーモンのサンドイッチを囓りながら、返事を待つ。 少ししてチロリロリンと通知音が鳴り、慌てて携帯を手に取った。 【三連休なんていいご身分だな。 それとも土日休日出勤決定の、前倒し休みか? まあいい、昨日の時間に昨日のところ】 「ひさしぶりの三連休だっていうの」 ちょっとだけ唇を尖らせて、携帯に突っ込む。 普段なら腹が立つところだが、会えるってだけで上機嫌になっている自分がいる。 「んで、いまからどうしよう?」 ふと目に入ってきたのはネイルもぼろぼろの指先。 前にサロンに行ったのなんてかなり前だ。 「いまから予約取れるかなー? できたらエステと美容院も行きたいよねー。 って、無理して今日行かなくても明日も明後日も休みだし!」 ネイルサロンに予約を入れたら、平日の朝だからか意外とあっさり取れた。 ダメ元でかけてみた、エステも。 「今日はついてる、かも!」 これが私をあいつから外さないための休みだってことは、いつの間にか忘れていた。 続きは同人誌 BOOTH https://haruka-megajo.booth.pm/items/1675982 もしくはKindleで! https://www.amazon.co.jp/dp/B08954SXJY (Unlimited会員様は読み放題対象です)
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