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私、三島このえは死んだ。はずだった。
目がさめるとそこはかつての自分の部屋のベッドの上。
(なんで…?私は事故にあって死んだはずなのに)
スマホを見ると6月7日。半年前に、戻ってる⁉︎
鏡を見ると、ショートにしたはずの髪は胸のあたりまである。カレンダーも去年のものだ。
嘘だ、信じられるわけない。だって…!
「このえー?朝ごはんできてるわよー」
お母さんだ!
「はぁい!」
慌てて私は階段を降りる。
朗らかな笑みを浮かべた母が私を見つめる。
「もう、そんなに慌てて。どうしたの?」
「お姉ちゃんってば。朝ごはんは消えて無くなったりしないんだから」
クスクスと笑う生意気な妹。無愛想に新聞を読む父。
ああ…半年前まで当たり前だった日常だ。
みんなを抱きしめたい衝動に駆られながらもぐっと堪え、席に座り、朝ごはんを食べる。
美味しい。いつものお母さんの料理なのに。私は半年ぶりにちゃんと食事をした気がした。
「もう、そんなにがっつかないの。明日は慎一郎さんとの結婚式なんだから」
慎一郎さんとの結婚式…
その言葉に驚き、思わず茶碗を落としそうになる。
そうだ、明日私はあいつと結婚するんだ!
「お姉ちゃんってばすごいよねー。まさかあの鳳凰寺財閥の御曹司を捕まえるとは!玉の輿じゃん!」
半年前まではそう思ってました。
「こら!そんな言い方しないの。でも、お見合いで出会ってその日のうちに結婚まで決意されるなんて、ドラマみたいよねぇ。ね、お父さん」
半年前まではそう思ってました。
「人柄もいい好青年だった。彼ならお前を幸せにしてくれるだろう」
半年前まではそう思ってました!
でも今はそう思わない。思えない。
だってあいつは、とんっでもないクズだったんだから!
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