あなたを絶対(社会的に)殺します!

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とは言ってもどうしたものか。 やっぱり「社会的に殺す」んだから奴の浮気を公表するのが1番手っ取り早いよね。でも、誰がいいだろう。 あいつ、8股かけてたんだよなぁ。 合計7名の浮気相手は一週間で判明した。 「火曜日の人」とか「木曜日の人」とかいう風に決まってたらしく、結婚してから毎日違う女を連れ歩く旦那を目撃するとかいうプチ拷問を受けた。目の前ブラックアウトどころじゃない。顔面蒼白卒倒5秒前だった。 お相手は見事に全員タイプが違った。容姿、性格、ハーフの方とかも。 共通点はとんでも美人で巨乳ってこと。自分の胸との差に絶望するくらいにデカかった。メロンでも入れてんのかってくらい。なんであのクズがそんな好物件7人も探し当ててんだよ。私だってできるならイケメン侍らせたい人生だったわ。 それはともかく、写真に収めて浮気を暴露するのが1番楽だよね… でも、奴の家は世界的財閥。握り潰される可能性が高い。あんなに堂々と浮気して平気だったのもそういう握り潰してもらえる安心感からかもしれない。 「あ〜!手詰まりかぁ!」 部屋で1人そう喚く。 協力者でもいたら楽なんだけど… でも「実は私、半年後に死んじゃって死に戻りしてきたんだけど。で、あいつクズだから社会的に抹殺したいんだけど」って言って誰が信じてくれるだろうか。頭おかしくなったと思われて病院に強制連行だよね。私も以前なら間違いなくそうしてた。 結局何にもアイデアの出ないまま、結婚式当日を迎えてしまった。 「昨日は朝からフリーだったのに……ものすっごい無駄にした気分…」 結婚当日の花嫁のセリフじゃないなこれ。 洗面台の前に立ち、いやいやながら準備を始める。 ダメだ。少しでも奴のために準備してるのかと思うと殺意が湧く。 昨日の箸のごとく歯ブラシをへし折らないよう気をつけながらそれ相応に身なりを整える。 ピンポーンとチャイムが鳴る。 「このえ〜?慎一郎さんがいらしたわよ〜」 ついに、来たか。 「はぁーい」 身支度はできてる。でも心の準備は全くできてない。胃が痛い。 落ち着くのよこのえ!前向きに考えるの。そう、人生で二回もあの煌びやかな結婚式を挙げられるのよ!喜べ私! 必死に前向きに考えようとすればするほど胃が痛い。 もう後戻りはできないんだ。というかあのクズに復讐しなきゃ気がすまない。 「よし!」 胃薬を飲んで、私は玄関に向かった。 「おまたせしてすみません」 にっこり営業スマイルを浮かべる。 なんでこのクズに笑いかけなきゃいけないんだろう。 「いや、そんなに待ってないよ」 そう王子様スマイルを浮かべる。 半年前の私なら「やだ…カッコいい!」ってなったんだろうけどなぁ。今は無だ。むしろ後ろの茶髪イケメンの方が気になる。 …ん?まて、誰だあの人? 旦那(クズ)ばりの顔面偏差値×高身長イケメンを私が見逃していただと…? 半年前はこのクズに夢中にだったからなぁ。そういやいたかもしれない。 そんなことをぼんやりと考えていた時だった。 「死ね!慎一郎ぉぉぉぉ!」 グサっ! 腰に鋭い痛みが走る。 は?今…何が起こったの…? ぐらりと視界が揺れて、私は地面に倒れる。 前回はこんなことなかったのに。 「いった…」 誰かが必死に私を呼びかける。少なくともあいつの声じゃない。 つーかあいつ、私のこと盾にしたよな⁉︎ 誰かの怨みのこもった叫びと同時にあいつは私をその叫びの方に向け、盾にしてきた。 本当に刺される筈だったのは慎一郎だ。 「っざけんな…!」 視界の端になんの感情もない顔を浮かべた奴がいる。むしろ若干ほくそ笑んでる気もする。 ふざけんなふざけんなふざけんな! なんで死に戻ってきたのにまた死ななきゃいけないのよ! あんたに何にも復讐できてないのに! しかも人のこと盾にして生き残りやがってえぇぇぇぇぇ! ほんっとクズだ!最低だ!なんであいつが生きて私がまた死ななくちゃいけないのよ! あんたなんか、あんたなんか、豆腐の角で頭ぶつけて死ねばいいのにぃぃぃ! 全身全霊で呪い倒したあと、私の意識は途絶えた。 そして眼が覚めると、私の部屋のベッドの上だった。 「えーと…また私、戻ってきてる?」
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