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昨夜、ぼくはあの並木道を歩きながら、月明かりの下で桜が散るのを眺めていた。桜吹雪、などと言うけれど、折からの強い風の中、ぼくの頭上を、肩先を飛んでいく花びらはまるで雨のように想えた。
以前、落葉は風を恨むか、とぼくに問うた友人にぼくは、どうかな、としか答えられなかったけれど、もしそうだったとして、ならばこの瞬間、吹き飛んでいく花びらも風を恨むのだろうか。
そうだとしたら、これはなんと悲しい光景だろう、とぼくは想った。沢山の恨みが、小さな礫となってぼくの傍らを次々と通り過ぎていく。
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