革命の余韻

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ガチャン!耳障りなを立ててドアがしまる。それなりに高級なマンションだから平日の昼からグダグダしている住民は俺くらい。よって耳障りな音を立てても咎められない。マンションのエントランスから面してる道に出ると、平日の何とも言えない雰囲気を灰色の空が更に引き立たせている。最寄りのコンビニでライターと夕飯のカップ麺を買い、コンビニを出ると何やら声が聞こえる。コンビニと住宅街の間にある公園が声の出所らしい。それなりに人だかりも出来ている。何気なく確かめに行くことにした。近付いていく程、聞こえる声が鮮明になる。公園の中央に立つ声の主を視認できる頃には、演説がはっきりと聞こえる。演説者は若い男だ。まだ大学生くらいだろう。演説歴十数年の俺からするとまだまだ甘い演説だ。ギャラリーも彼が結局何を言いたいのか良く分かっていない。結局彼の演説内容は、国を変えた新政党の一強体制ではまた腐敗政治が始まる。とのことだ。俺はもう一線を退いた身分だから政治に口を出す気にはない。必死の演説の声を背に浴びて家への帰路に着く。全てが灰色に見える街を歩いてふと考える。俺は勘違いをしていた。公園で演説をしていた彼くらいの頃は、自分が、自分達が、国という歯車を回せると思っていた。実際は違った。この国という歯車の“少し目立つ部分„に、なれただけだった。彼がもしこの国を新しい形に変えた時、変え終わった時にも、俺と同じ事に気付くのだろうか。それとも全く違う答えを出して、生きていくのだろうか。もう、知らん。自分の将来とか、若き演説者のこととか、考えるのに疲れた。一旦、何も考えず暮らしてみるのも良いかもしれない。思い返せば俺は今まで『この国を変える』ことだけに生きてきた。個を捨てて、夢に生きてきたんだ。その夢を叶えて俺に残ったのは、個を認められない怪物だ。怪物が怪物であることを認識できたんだ。変化はしてるのかもしれない。ポツリ。気付いた途端に地面が水玉模様になる。そして走ることを思い付いた時には土砂降りになっていた。ザーーーーーーーーーー。確か朝に、天気予報で雨とか言ってたような気がする。だから今さら何だと言う話ではあるが。雨を全身で受け止めて、雨で体の芯が冷えるのが分かる。夢を失った怪物の涙かもしれない。なんて感傷的なポエムを思い付くとは、俺も変わったな。この調子ならいつか次の夢を見付けられるかもしれない、そして一生見付からないかもしれない。まあ、どうでも良いことか。ザーーーーーーーーーー。雨の音で溜め息を付いたのかも分からない。ザーーーーーーーーーー。「糞食らえ」雨の音に交じって呟いてみた。
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