影松高校 入学式

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影松高校 入学式

この物語の舞台である県立影松高校は、御影石の産地で有名な神戸市東灘区御影町にあり、かつては兵庫女学校の歴史を持つ兵庫県内でも有名の進学校である。 「清く明るく正しく」というのが女学校時代の校訓で男女共学となってから男子が入るに至り最後に「強く」を入れたという経緯がある。 影松高校入学式  4月のこの季節は、兵庫県立影松高校の周りは桜が満開である。 体育館の中では新入生の入学式が行われていた。 「えー、それでは生徒会長の挨拶に続きまして藤田校長先生の挨拶です。一同起立、礼!」 進行担当教諭の紹介のあと、昔は体育の先生をやっていたという恰幅のいい藤田校長がマイクの前に立つ。 「皆さんまずは入学おめでとう!!心からお祝いいたします。・・・・えー、であるからして、我校の校章は畏れ多くもその昔、神功皇后が三韓征伐のおりにそのお姿を水に映したこの御影の地に植えられた松の葉をかたどったものでありまことに由緒正しいことこの上なく・・・・」 校長の藤田先生のいつもの名調子が始まったようである。 もうこうなってしまったら話し好きな校長が自分に酔ってしまうタイプで、なかなか快進撃を止められないことは他の教員たちとPTA役員たちの苦渋の表情から容易に察することができる。 「あかん、『うしよだ』の登場や!」 「あちゃーエンジンがかってしまった」 「あーあ、また『うしよだ』の藤田の長演説が始まったぜ」 「そうそう、あの校長ったらこの長演説さえなければ普段は生徒思いのいいオヤジなんやけどな」 「毎回牛のよだれのようにダラダラ長い話なんで付いたあだ名が『うしよだ』か、うまく言ったもんだな」 今まで相当被害にあっている上級生のぼやき声が、体育館のあちこちで聞かれるようになってきた。 具にも付かない長話がかなりの定番らしいことがわかる。 「・・・であるから今年本校に入学された諸君たちは誇りを持って有意義な3年間の高校生活を本校で過ごすことを切に希望するものであります」
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