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勾玉
「メグ、その首飾り。きれいねー」
「そうそう。私もあなたの自己紹介のときに思ったの」
「ちょっとさわってもいい?」
元来人を惹きつける能力があるのか、メグはすでに多くの女生徒に囲まれていた。
明るく屈託のないメグが入学初日から早速クラスの人気の的になっていた。
「あ、これね。これは私の種族のシンボルなのよ」
「種族って何よー!まるで未開の原住民族みたいね」
「それよりあななたち、この首飾りってどんな形に見える?」
勾玉を振るメグ。
「え、おたまじゃくしの形」
「胎児がお母さんの中で丸まっている感じ」
「人魂の形かな」
「数字の9かな」
「私は真円に見えるわ」
と、一人のおとなしそうな女生徒が言った。
「そう、そのとおり。ピンポーン!ってあなた凄いわね。名前は何ていうの?」
「摩耶よ。摩耶富士子」
「摩耶さんは何でそう見えたの」
「緑の玉と同じ形のものがぼうっと反対側に並んで真円を形成しているように見えたの」
「説明の必要なしね、パーフェクトだわ!」
「へー私にはひとつの玉にしか見えないけど・・・」
一人の女生徒が勾玉を手にとってシゲシゲと観察している。
「私たちの種族の基本的なモノの考え方は『物事は常に一対』なの。例えばね光と影、生と死、男と女、善と悪などね。この考え方は奈良時代に陰陽というかたちで、すでに伝えたはずだけど・・・」
「伝えたって、あなたが?」
「またー!面白い冗談ね」
「でも陰陽師っていうのは聞いたことがあるわ。安陪清明だったっけ平安時代の人よね、たしか」
「ということはこの玉もそういう意味があるの?」
摩耶が尋ねる。
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