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急にクラスの皆がしんと静まり返った。
…?まだ休み時間終わってないよな…?
寝ていた誠也は顔を上げた。
そして、今のクラスの状態に目を疑った。
みんながそのままの状態で眠っていたのだ。
スマホを持ちながら、友達と喋りながら、みんな、眠っていた。
「え…?」
いつも一緒にゲームをしている優也の席へ行き、肩を揺らしてみても、起きない。
「おい、優也?」
すると、どこからか声が聞こえてきた。
「おやおや。俺としたことが眠り残しがいたとはなぁ…もしかして、君さっき寝てたのかなぁ…?ま…いいか…俺は睡魔…名乗ってもお前は俺に喰われるから意味ねぇかぁ…そいじゃ、眠ってもらうよ…」
誠也はそう聞いた瞬間、走り出していた。
でも、逃げてどうするんだ…?
そういえば、噂で聞いた狐様にお願いすれば…!
誠也は校舎裏へと走っていった。
───祠に向かって狐様を呼び出す…
誠也はゴクリと息を飲んだ。
「狐様狐様願いをお叶えください」
少し目を瞑っていると、あっと言う間に周りの景色は変わっていた。
あまりに吃驚していると急に背後から声がした。
「今回のお客様は気を失わずにこちらまで来れた様ですね。」
すぐ後ろを振り向くと10歳くらいの男の子が立っていた。
「こちらの世界に来る途中で気を失ってしまうと、此岸と彼岸の境界を彷徨うことになってしまう確率が高くなってしまうんですよ。 申し遅れました。私は案内人のソラです。」
「そうなんですね…?僕は誠也です…」
正直、シガンとかヒガンとかわかんないけどとりあえず自己紹介しておいた。
「誠也さんはどうしてここへ来たのですか?」
階段を登っている途中にソラに聞かれた。
「睡魔って言うなんか変なヤツが教室にいて…」
「そうなんですか…睡魔はかなり強い怪魔ですね…西洋の怪魔ですので…シロ様 とクロ様もだいぶ手こずるかと思います…」
つきました、とソラが言うと、ソラはいなくなっていた。
「わぁ…!」
都会の学校では、もしかすると田舎でも見られないほどの大きな木が立っていた。
その木の影から、黒髪の男の子と白髪の女のk
「女じゃねーよ」
その子は、僕の脳内実況を途中で遮ってきた。
「はぁ」
なんでわかったんだろう、と僕が思っていると、
「千里眼で全部お前の心見えっからな?!」
なるほど、そう言うことか。
「納得してないで向こうに行ったら噂、変えといてもらえるかなぁ?!」
白髪の子が怒っているところを黒髪の子がなだめてくれた。
「はいはい、シロ、落ち着け。あ、お前は誠也だよな、オレはクロで、こっちは、」
「正真正銘男のシロですウゥー!!!」
まだシロさんは怒っているらしかった。
「シロ、これやるから落ち着いてくれ、で、誠也は睡魔が学校に出たんだよな。」
と、クロは言い、どこから取り出したのかあぶらあげをシロに手渡した。
「はい、みんな眠ってしまっていて、」
「睡魔ってのはさ、普段は人間の不眠症とかを治してくれる良い怪魔なんだけど、自我を失うと人の生気を喰らい始めて、俺らじゃ手に負えないんだな…」
「え…じゃあどうしたら…」
「睡魔は一日に20時間寝ないと死ぬ体質だからそんなすぐには喰ったりしねぇから安心しろ!」
不安になりかけていた僕をクロさんは勇気づけてくれた。
「いや、でもさぁクロ、アイツ強いみたいだからスミレとツバキのところ行った方がいいんじゃね?」
あぶらあげを食べ終えて正気を取り戻したらしいシロはクロに聞いた。
「えー…アイツらんとこ行きたくねぇな…」
「でもいかないと絶対勝てないよ?」
「…じゃあ、行くか…」
クロは乗り気じゃなさそうだが、行くみたいだ。
「僕も、行った方がいいですか。」
クロさんに聞くと、
「いや、お前は先に向こうに行ってろ」
クロが目の前に手をかざすと、たくさんの神社の鳥居が現れた。
「ここ通って行けば、学校に戻れるからな。」
クロはそう言い、シロを連れて木の影に消えて行った。
「おぉ…」
鳥居を六個ほど通り抜けると、学校に着いていた。
足音を立てないように教室に戻るとまだみんな眠っていた。
睡魔も空中で眠っていた。
睡魔を起こさないように静かに待っていると、壁に大きな穴が現れ、シロとクロと赤髪と紫髪の女性が現れた。やはりその二人にも狐の耳が生えていた。
赤髪の女性がこちらに気付くと今まで僕が静かにしていたのにも関わらず、バカでかい声で話しかけてきた。
「あら〜〜〜!人間じゃないのぉ〜〜〜人間の男なんて二十年ぶりに見たわぁぁぁぁ〜〜〜」
すると、紫髪の女性が赤髪の女性の頭を叩いた。
「ツバキ、今日は遊びに来たんじゃないし、いつまでも子供みたいにはしゃいでんじゃないよ。」
「え〜〜〜でもまだ私一八〇〇歳だよぉ〜〜〜?スミレと違って二〇〇年も
若いんだけど〜〜〜?」
どうやら赤髪の女性がツバキさんで紫髪の女性がスミレさんのようだ。
それにしても…一八〇〇歳…えぇ…?こんな若くて綺麗な女性が…?
クロさんが僕に耳打ちをした。
「こんな面倒な人だから行きたくなかったんだよな…あと、俺ら妖狐は人間の一〇〇倍生きるからツバキは人間の年齢で言うと18歳な。」
そんなに生きるんだ…大変だな…
ツバキとスミレが言い争い(?)をしているとシロが舌打ちをした。
「年齢なんてどうでもいいから睡魔を」
(ドンッ
シロが話している途中で何かが足元に落ちてきた。
確認するとそこには何もなく床が大きくへこんでいた。
「もー…うるさいなぁ…せっかく寝てたのに…って、妖狐がイチ、二、サン…四人もいるじゃないか!妖狐は喰うと寿命が延びるって言われてるよねぇ!出会って間もないけど、死んでもらおうかな?」
睡魔はそう言うと両手から大きな光の球を出した。
「あら〜〜〜あれは光術を使ってるシロさんが相手した方がいいじゃないんですか〜〜〜?私が後で炎術でトドメさしますから〜〜〜」
と、ツバキが言うより前にシロは睡魔に向かって走り出していた。
「妖術・光雷!出でよ、雷神!」
シロが叫ぶと目が黄色く光り、手を前に突き出すと大きな雷が睡魔に目掛けて轟いた。
「ではでは〜〜〜妖術・炎真!炎姫!」
シロ同様、目が赤く光り、火柱が睡魔に向かって走った。
睡魔は叫び声も上げずに消滅した。
「怨。」
シロとツバキが同時にそう言うと、睡魔は二人に吸収され、頬に「睡」の光文字が刻まれた。
「代償に何貰おうかしら〜〜〜て言うか最近代償って言うより報酬って言う方が言葉的に合ってるような気がするのよね〜〜〜」
「狐様はやっぱりあぶらあげとかですかね?」
と、誠也がクロに聞くと、
「いや、スミレ達もいるし酒、もらえるかな?」
「家にはビールくらいしかないですけど、」
「構わん構わん、ちょいと床開けてくれ、」
クロが術を唱えると床に大きな穴が開き、うちのビール箱が出てきた。
「おぉう」
「じゃあ少しもらうねー皆はそろそろ起きると思うよーじゃーねー」
ーその夜ー
「誠也ー父さんたちのビール知らないかー?」
あ、ヤバい。
「シ…知らないよ…ハハハ…」
第二尾〜眠りの睡魔〜 完。
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