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「みっ、湊。ちょっと、聞いてもいい?」
「いいけど。何?」
「あたし、今さっきの、は、初めてだったんだけど……」
隣を歩きながら、あたしの顔はまだ熱い。だって、湊がこんな、こんな大胆なひとだなんて知らなかったもの。
片想いのときには、全然知らなかった。これって、彼女の特権? そうなのかな。そう思いたい。そうだったらとても嬉しい。もう何でもいい。
「や、あの、ふつーに、俺もそうだから……」
だんだん、語尾が弱々しくなる。見上げれば「死にそう」と湊も負けじと赤くなっていた。
ああ、もう、ほんとに。
「おんなじ、だよね?」
「うん、まあ。そう、だろ」
恥ずかしいのも、このどうしようもなく胸がいっぱいな気持ちも。今は、一緒なんだよね。それってすごいこと。ありきたりな言葉を借りると、奇跡だよね。
もう、あたしだけの一方通行の想いじゃないんだ。片想いじゃ、ないんだ。
幸せだって、笑みがこぼれてしまう。それに気づいた湊が瞳を細めて優しく笑うから。
……好きだなあと、心からそう、思った。
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