送信元非表示

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結婚式の二次会から三週間。 真紀子はずっと後悔していた。 誰にも相談できない。 買い物をして帰宅し、湯船にお湯を張っているとスマホが震えた。 『あしたのあさ ろくじ よこはまべいしぇらとん こんぱす まて』 「誰よ?」 送信元が非表示になっており返信ができないし、送信者の確認もできない。 「気持ち悪いなぁ。」 風呂に入りお湯に浸かりながら怪奇文書を考える。 「ま、ほっとこう。考えるな自分。」 翌日、普通に出勤しお昼休みを取る。 スマホが震えた。 また、送信元が非表示だ。 『なんでこなかった にばんめ あしたはこいよ』 「ん?!」 宏美にLINEを送る。 <今、平気?勝と連絡とりたいんだけどLINEかメアド、電話番号しらない?> 返事はすぐに来た。 <ごめん。知ってるんだけど口留めされてて。あんた、付き合ってたんだって?ごめん。なーんにもできない。> <わかった。ありがとう> 「勝だ・・・。どうしよう・・・。」 午後の業務はミスが多く怒られっぱなしだった。 翌日 朝六時にコンパスに来たものの、勝は現れなかった。 期待していただけに失望感は大きかった。 スマホが震える 『きょうはきてたね あんしんした あしたはいっしょにたべる』 「やられた・・・・。」 仕事をこなし夜が来た。 何に期待し、何の行動をとりと何をやっているんだろうと。バカバカしいとさえ思った。 翌日 真紀子はコンパスの前に立つ。 「おはよう、まき。」 「おはよう。あーあたし何やってるんだろう。」 「俺に愛されに来てるんだよ。」 「最低。」 「お互いにな。さ、中入ろう。」 落ち着いた内装 高級感溢れる朝食バイキング。 「朝からやってるんだ?へぇ~凄い。初めてこのホテル入った。」 「朝からモリモリ食べれるし、結構、気に入ってるんだ。その場で作ってくれるオムレツは絶対に食べるべき。」 「和食、洋食、中華かぁ。」 「ホテルとか旅館のご飯って不思議とすすむよね。」 ビジネスマンと富裕層と思われる年配の方しかいない。 ビュッフェだが、割り込みもなく、逆走もなく、終いには譲り合ってしまって取るのに時間がかかる。 好きな物を取り着席する。 黒のスリーピースのスーツを着た勝は高校生ではなく大人の色気を伴っていた。 ジェルで固めた清潔感ある髪型も素敵だった。 「ごめん。私、帰る。」 「せめて食ってから帰れ。食材と料理人に失礼だ。」 パクパク食べる真紀子 「味わって食えよ。失礼なやつだなぁ。」 「電話で別れを告げる失礼なやつに言われたくない。」 「そんな事もあったね。」 へらへら笑う勝。 「SMS」 「ん?」 「SMSどうやって送って来てるの?」 「ああ、公衆電話。ポケベル覚えてる?公衆電話からかけてベル打ちするとSMSが送れるんだよ。俺の携帯に履歴も残らないし、俺の番号はバレないし。返信も来ない。便利だわぁ。」 「勝って他にも女いる?」 「いる。」 「ばかじゃないの!?」 真紀子は立ち上がり叫んだ。 「お客様、何かございましたでしょうか?」 「あ、申し訳ない。問題ありません。まき、迷惑かけるな。座れ。」 真紀子は着席した。 「ありえない!」 「お前だってありえない行動に出ただろ?きちっと完全に二番目に愛してやるよ。」 「いやな笑い方ですこと。」 「プンスカしていて可愛いですこと。」 「ムカつく。」 「へへっ。こうやって会話するのも高校ぶりだな。出勤、何時?」 勝は口がうまい。なんだかんだと2時間喋りっぱなしだった。 「お願いします。」 勝が手を挙げてスタッフを呼んだ。 「テーブルチェックしたいんだけどお願いできます?」 「かしこまりました。」 下がるスタッフ。 「あ、払うよ。いくら?」 「ここは俺が出すから次で何か奢って?」 テーブルチェックの間、スマホでコンパスを調べる。 「サービス料10%加算だから・・・え?朝食に4千円?!」 「バカかお前は声がでかい!恥知らず。」 「えーもっと食べておけば良かった。」 「ははっ。お前のそういう所、嫌いじゃないよ。」 各々、出る支度を調える。 「勝、番号教えて?」 「やだよ。二番目はSMSで上等だ。また連絡するから。」 「ちょっと!」 勝はさっと退店してしまった。 なんともいえない虚しさが残る。 「あ。お礼、言い忘れた。も~~仕事行こ。」
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