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さて兎の中の人の挑戦はこれで終わらない。
実はもうひとつ職場の方に聞いた裏技、古いお茶をフライパンで炒めてほうじ茶にするというものも試したのだ。
うちには祖母が飲みかけで何年も放置したお茶がいくつかあったため、試してみたくなったのだ。
私はフライパンにアルミホイルを敷き、お茶を炒めた。
ここまでは順調!
いや、失敗しようがない。
賢太郎さんのネタを真似ながら気分よく炒めていた。
するとだんだんほうじ茶のよい香りが……
しない。
……いや待て。なんか違うものが焼ける臭いがするんだけど。
アルミホイルが燃えているのが?
と思ったが違う……はて?この臭いの正体は??
お茶の方は色が変わり、見た目はいい感じのほうじ茶になりつつあるが……
漂うこのかほりは、燃えてはいけない何かの臭いだ。
私は火を止め、ふとフライパンの横を見てその臭いの正体を突き止めた。
急須の持ち手(プラスチック)が燃えてる!
溶ーけーてーるー
この異臭、プラスチックが燃えていた臭いだったのだ!
変形した急須の持ち手を見て私が呆然と佇んでいると母が現れたのだ。
「ほうじ茶うまくいった?」などと、のんきに声をかけるがほうじ茶どこの騒ぎじゃない。
私は「問題が発生した。急須が燃えた」と、素直に白状することにした。
だが、母は私の話を真剣に聞いてくれなかったのだ。
「何、あんたバカなこと言ってるのよ」
あろうことか母は私の言葉をろくに聞かず、溶けた急須の取っ手を持ったのだった。
「お母さん!!持ったら火傷するよ!」
「はあ?」
私の叫びはなぜか無視されてしまった。
いや、それより溶けた取っ手を持って母は熱くないのだろうか?
そんなことを考えていた時だ。
「…………あつっ!」
反応鈍すぎか!
アルコールが入っていたとはいえ、ワンテンポ遅れて熱さを感じた母。
溶けてすぐではなかったので大事には至らなかったが、一歩間違えたら大火傷である。
そんなこんなで急須の取っ手という尊い犠牲と共に生まれたほうじ茶はなかなかに香ばしくうまく出来た。
いや、もう1つ、心配事も増えた。
母の鈍感さだ。
この事件を期に更に母を大事にしなくてはと、私は心に誓ったのだった。
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