第22章 魔王と領土視察~魔王国南方領シュメイ編・2日目前半~

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人間たちの撃破は難なく終了で、引き上げていくはずだったイシュタムさんに、ネイレドが自分も魔王城に連れて行ってほしいと懇願。 とはいえネイレドは次のエルフの長になる人物だから、どうしようかと悩んだイシュタムさんは、とりあえずは、修行という形でネイレドを受け入れた。 当時はまだ、【魔将】というものはなかったから、普通に一兵士としてって感じだけど。 元々、剣と魔法の腕が立ったネイレドは、あっという間にトリトンに次いでNO.2の座についた。 それからずっと、イシュタムさんの片腕としてその力を存分に発揮していた。 で、今から約220年前、魔王国の国境付近にあった魔族の村が、人間に襲われた。 多くの者が傷つき、中には殺されたものもいた。 原因は、魔王国に移住したいとやってきた人間の中に、スパイがいたこと。 変装した人間国の兵が、仲間を招き入れて村を襲った。 小さな村で、駐留している魔族兵が少なかったというのも原因の一つだった。 すぐにイシュタムさんの指示でネイレドと仲間になっていたアイベスがやってきて、人間国の兵は討伐された。 その、人間国の兵に殺された者の中に、ハイワルトの両親がいた。 民家の中、折り重なるように息絶えている男女。 その女性の腕の中で、泣く、赤子のハイル。 ネイレドは、最初はハイルを別の誰かに預けるつもりだったのだけど、ネイレドに抱きあげられたハイルは、ぴたりと泣くのをやめたかと思うと、垂れ落ちてきたネイレドの髪をつかんで、ニパリと笑って見せたのだと言う。 そんなハイルを見たネイレドは、自身の手でハイルを育てることを決意したのだそう。 周囲は最初、ネイレドに子育てができるわけがないと思っていたが、ネイレドは意外にもしっかりと育てることができたらしい。 ただ、残念なことに料理の腕だけはダメだったようで、料理だけはネイレドの弟でもあり、【魔将】の一人でもあったサオに手伝ってもらっていたそうだ。 ハイルが料理上手で料理好きになったのも、そこが理由らしい。 料理のできない養父に代わって、うまい飯を食わしてやりたいと頑張った結果、料理が趣味となったとのことだ。 それ以外のことは、ネイレドからすべて教わったと、後でハイルは教えてくれた。 ハイルの剣と魔法の腕前も、ネイレドから教わった結果ということだ。
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