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連絡
僕は、呑気だった。
無自覚、無責任だった。
想像力がなかった。
母からの連絡はいつもLINEだから、電話は初めてだった。大学に着いたばかりなのになぁ。
「きみちゃんが入院した。コー(僕の呼び名)、熱ない?頭痛とか咳とかない?」
いきなりでビックリ!!
「コロナで入院したんだよ。感染元がわからない。回りにいない?」
悪い冗談は止めてくれ。
「ちゃんと調べてよ。船に乗ってたり、海外旅行に行ってた人はいない?」
いるけど、会ったことないよね。
「その人と会った?それって帰省前?」
確かに帰省前だけど…
「家族みんな調べてるの。直ぐに調べてもらいなよ。外出前に電話して相談してからよ」
どうなってるんだ?
とりあえず、今いる大学の健康ルーム(大学の保健室)へ連絡したが、それからがたいへんだった。
濃厚接触者として隔離、検査、聞きとりなど、次から次と追いまくられる。
同じ頃、先輩が入院していたことは後から知った。陽性、自覚症状なし。先輩のお母さんから電話があった時には僕も隔離生活たった。先輩と同じだった。
なぜ、きみちゃんに感染した?
家族は陰性なのにきみちゃんだけ?
その後、家族は2週間の自宅待機。仕事も学校も行けない。きみちゃんはかなりの重症と知らされることはなかった。
「まだ入院してる」
そう聞かされていた。家族は僕を責めない。
「もう少しだから頑張れ」
父からLINEがあった。母からもあった。妹は限定品の写メがあった。
なぜだ!!なぜ、先輩?
どうして、僕?
よりによって、きみちゃん?
家族は面会できなかった。最悪の場合の説明があった。僕には知らされなかった。
僕は退院後の自宅待機中にもたくさんの人に助けてもらった。宅配便は玄関先に置いてもらった。家から、先輩家族から、バイト先から、彼女からもあった。LINEや手紙もあった。
感染は、きみちゃんと僕だけだった。先輩家族にも出なかった。
でも、それですんだのが奇跡に思えた。僕は運び屋になっていた。県内2人めにしてしまった。
大好きなきみちゃん。祖母を殺しかけてしまった。家族や友だち、大学やバイト先には迷惑と心配をかけてしまった。
ゴメン。ごめんなさい。すみませんでした。申し訳ありません。
、ありがとう。ありがとうございました。感謝します。感謝申し上げます。
どれだけ言ってもたりない。僕はどうすればいい?何かをしなくちゃいけない。どうしたらいい?
退院したきみちゃんが言った。
「今までと同じでいいよ」
僕は、悔やんでます。
あなたは、君は、運び屋になっていないかい?
想像して欲しいんだよ。今からでいいから。無責任に移動しないでくれ。
僕みたいにならないで。こんな気持ちになってほしくないんだ。
もう一度、回りを見てほしいんだよ。お願いだ。
君にできることをしてよ。
あなたはしちゃいけないこと、しないでよ。
タノンダヨ。
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