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人間なんて小石みたいなものだ。 そこら中に転がっているありふれたもの。真に価値のあるものなんて1%にも満たない。流されやすくて、傷だらけ。強い圧力の前にただただ潰される。そして、無くなっても誰も気に留めない。 僕、御霊伊英(みたま いい)はその小石の様子を産まれてからずっと見てきた。周りもそんな石ばっかりで、将来に希望なんて無かった。『ああ、自分もそのうち石に成るのかな』なんて思っていた。あの人に出会うまでは。 あの人は石じゃなかった。輝くダイヤモンドのような人。僕を救った義父さんは、真に価値のある人だった。 だから僕は義父さんに従ってきた。ずっと、ずっと。これからも、ずっと。 だから、今回も僕はだ。 まだ見ぬ君達へ、僕は心から君達の全滅を願う。 電気が消え、月光が差し込むがらんとした部屋の中で僕は睡眠薬を水とともに飲み込んだ。
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