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題:7
「…上がってきたね。待って、人が居る…!」
エイルの声が始まりで、皆が食い入るように反対側の部屋を見ようとする。
「私たちは見ない方がいいわね。」
OLが窓に近づこうとするケイと少女を引き止める。確かにそれが賢明だろう。彼女たちには刺激が強すぎる。
「うぇ…」
意外にも筋肉のある男が口元を押さえながら窓から離れた。僕はそっと空いた隙間から反対側の部屋を見る。
中では恰幅の良い男が真っ赤になって倒れていた。窒息か衰弱か、男はその場から動かない。今回は最初から酷い死に方だな。
[一命脱落か。幸先の良いスタートだな。ククク…楽しみにしているよ。]
「人殺しといて何笑ってんだ!そんなに人が苦しむ様が楽しいか!」
キュウがスピーカーに向かって叫んだ。部屋の中の雰囲気は一気に陰鬱になる。
[君の言える台詞ではないと思うのだがね。幼馴染を死に追い込んだ金城救君。]
「う…」
キュウが義父さんの一言で黙り、他の参加者たちも動揺し始めた。
態度にこそ出てないが、キュウにも後ろめたい過去があるのだろう。
[さぁ、早く次のステージへと進みなさい。この部屋もそのうち沈ませるぞ。早く行け。]
義父さんの一言で皆が壁の扉の奥へと恐る恐る進み始めた。流石にあの男と同じ結末を迎えたくはないだろうな。
「チッ…」
小さく舌打ちしてキュウも出て行く。少し残って義父さんと喋ろうとしていると、エイルが僕の腕を指で突いた。
「そこの女の人、運んで。皆居なくなっちゃったから。」
部屋の中には僕とエイルしか起きている人が残っていない。そして人を背負える力があるのは僕だけという事だ。
「…仕方ないな。」
体のラインがくっきりと出るライダースーツを着た女性。本音を言えばどう背負えばいいのかわからない。後から文句言われないよな…
「ニヤけるな陰キャメガネ。」
「ニヤけてない!あと名前で呼べ!」
…彼女に飲まれちゃ駄目だ。僕はドアを開けて先へと進んだ。
義父さん、僕は必ず彼らを全滅させてみせるよ。
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