題:10

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題:10

最初のゲームで死んだ人といえば、誰も居ない筈の部屋から現れたあの恰幅のいい男だ。 …成る程、愁井さんから僕への配慮か。 「最初のって、あのおデブの人?」 アイは結構ダイレクトに物を言う。まだ子供だから仕方ないと言えば仕方ないか。 「そういや、俺達が部屋の中探してる時に通れない場所あったよな。もしかしてそこに隠れてたとかか?」 「隠れるって言ったって、どうやって隠れるんだい?部屋の中には何も無さそうだったが。」 それが出来るのが『異端能力』。『異端』の僕らに世界から与えられた特殊な力だ。死んだ彼が持っていた力は擬態か透明化。それで他人の目を欺いていたわけだ。 しかし、問題はそれをどうやって周りに伝えるかだ。下手に口走れば内通者であることがバレてしまう。かといって黙ったままでは折角の機会を無駄にする事になる。 「もしかして、特殊能力とか?」 皆が無言でいる中、半笑いでそう言ったのはシーナだった。 [ピンポーン!] スピーカーから鼓膜が破れそうな程の大音量で愁井さんの興奮した声が聞こえてきて思わず耳を塞ぐ。音量間違えてますよ。 「やっぱりそうなんだ。」 エイルが納得したようにソファに腰掛けた。彼女も『異端能力』について何かしらの推測を立てていたらしい。 「エイルさん?もしかしてエイルさんも超能力的な何か持ってるんスか?」 「僕だけじゃない。多分みんな持ってるよ。だからここに集められた。そう考えるのが妥当じゃないかな?」 彼女は本当に冴え渡っている。義父さんの計画は完璧だけど、それを狂わせる可能性があるぞ。 「じゃ、じゃあ誰か見せてくれよ!そんなのフィクションの中だけの話だろ!?」 「いやいや、そうとも限らないよ。投げてごらん、タケシくん。」 テイは激しく動揺するタケシに持っていた杖を手渡した。彼は既に『異端能力』を目覚めさせたのか! 「い、行くぞ。」 少し離れた所からタケシがテイに向かって杖を投げる。重そうな杖はテイの手まで届かず、降下した。 「それ。」 だが、テイの右手が擦った空間が歪み、杖はすっぽりとテイの手の中に収まる。 「す、スゲーッス!やっぱただの紳士じゃないじゃないですか!」 「私達もあんなのが使えるようになるのかな…!?」 見ていた人達から歓声が上がる。彼の能力は空間干渉の能力か… [『歪曲させる異端』、とでも名付けておきますか稲垣艇さん。私もそんなカッコいい力に憧れます!] アナウンスが機能していない。 「『異端』…か。あまり嬉しい響きではないな。」 「ところで、今の時点で能力が分かっている人は何人いるのかな?良ければ手を上げてもらっていい?」 エイルが手を挙げたまま尋ねた。ということは彼女も分かっている側の人間ということだろう。 この機を逃す訳にはいかない。僕もゆっくりと手を挙げた。それと、シーナも手を挙げていた。 「シーナ、凄い!」 「いやいや、私のはテイさんみたいな凄いのじゃないよ。」 シーナは照れている。先程のはやはり心当たりがあっての発言だったのか。 「僕はまだ隠しておきたいんだけど、二人は隠しておく?」 「うん、恥ずかしいし…」 僕は言うべきだろう。本当の事なんて何一つ言わないが。 「いや、僕は言う。僕の能力は動物と会話出来る能力だ。ここではあまり役には立たない。期待しないでほしい。」 …ああ、嘘だよ。本当の能力なんて教えるわけがない。僕の能力はそれほどゲームの攻略に適し過ぎている。君たちの味方をするわけにはいかないからな。 「え、それって!」 クチナシが興奮した調子で詰め寄ってくる。しまった…!まさか被っていたのか!? 「ケリーと話せるってことじゃん!いいなー!いやいや、やっぱり僕らは心が通じ合っているから能力なんて要らないや!」 「チュー!」 いや、本人は気づいていないが、僕が口に出した能力とクチナシの能力は8割ほど被っている。これはマズい。 「…?イイさん、どうしたの?」 「な、何でもない…」 [さて、なんとなく『異端能力』について話し終わったところで、生徒の皆さんにはペアを作って脱出の為に探索を行ってもらいまーす!] 愁井さんが助け舟を出してくれた。ゲーム中は彼女に助けられることも少なくない。 [今回は奇数なので3人グループが一つ出来ますねー。作れた所から部屋を出てもらって構いませんよー!それではステージ1、廃校探索開始ー!]
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