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題:1
「起きてください、起きてください!」
身体が激しく揺さぶられている。僕を脳震盪で殺すつもりか。
「…分かった。今起きる。」
瞼を開き、両手で地盤を確認する。大丈夫そうだ。僕は立ち上がろうか数秒考えて、止めた。
「なぁそこの君。すまないが起こしてくれないだろうか。」
起き上がれないフリをして他人の手を借りる事にした。最初のうちはこの方が信頼を獲得できるだろう。
「大丈夫っスか!?」
「まぁ、なんとかだ。」
茶髪の青年の手を借りて起き上がる。少年とは言っても僕より少し下くらいの高校生だが。今回のゲームも、中々特殊な状態からスタートのようだ。
部屋の中には僕の他に7人。先程僕を助け起こした少年。フードを被ったパーカーの青年、こちらは多分僕と同じくらいだ。部屋の隅でしゃがみ込み、震えている少女は中学生くらいだろうか。その反対側には未だ眠ったままのライダースーツの女性。そして、見るからに育ちの悪そうな青年二人とキラキラしたピアスの少女が談笑している。
一瞥した限り、最後の方まで生き残りそうなのは三人も居ないだろう。
ガラス張りの壁にはドアが一つあるが、幕のようなものがかけられており、外の様子は確認できない。四方の壁のうち、一つの壁だけは鉄で出来ていた。他はガラスだったが、その壁のドアは特別そうだ。床はタイル張りで、人が寝るのには適していない。道理で目覚めてから肩が痛いわけだ。
「えーっと…貴方も多分ここに連れて来られた理由を知らないんスよね?」
部屋の様子を確認していると、茶髪の青年が話し掛けてきた。彼はかなり積極的なようだ。
「ああ、見当もつかない。」
いや、僕だけは知っている。君達は世界から見放された15人の『異端』。僕は運営者側からの刺客だ。もちろん『異端』だが。
「参ったッス…まるでデスゲームやサバイバルものみたいで…。」
彼はどうやら勘が良いらしい。まさしくその通りだ。今から始まるのは完璧な『異端』を見定めるデスゲーム。
僕はポケットに忍ばせていたボタンを誰にも見られないように押した。
ピンポンパンポーン!
天井のスピーカーから学校のチャイムのような音が鳴り、続いて機械音のように加工された義父さんの声が聞こえてきた。
[世界から見放された君達へ、やり直すチャンスを齎そう。まずは、合流を目指しなさい。本格的な説明はその後だ。]
そして、壁の幕が落ちた。
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