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題:4
「イーさん、何か見つけました?」
「僕はイイだ。イーじゃない。…特には何も見つからないな。そもそもガラス張りの部屋に謎も何も無いだろう。」
…とは言ったものの、僕は見つけたとしても口に出すつもりはない。残りたければ勝手に残って死ねば良い。
「見事に何も見つからないな。もしかしたら向こうの部屋に謎が隠されていて、こちらは何も出来ないのかもしれない。非常に悔しいが。」
エイルが壁に背をついて座る。
「い、いや、それは無いはずです。放送では両方の部屋に仕掛けが隠されていると言っていましたから…あれ?」
ケイが突然壁に張り付いた。その目は真っ直ぐ反対側の部屋に向かっている。そういえば反対側の部屋にも人が居るんだったな。
「椎那!椎那!気づいて!私はこっちにいるよ!」
ケイが割れる可能性も気にせず壁を叩く。
どうやら向こうに知り合いがいるようだ。
ピンポンパンポーン!
再び放送が入る。
[制限時間の残りは10分となった。諦めるも良し、最後まで残るも良し。君達の自由にしてくれて構わない。]
室内を一瞬、静寂が支配した。
部屋を出るには丁度良い頃合いだろう。
「じゃあ、僕はこれくらいで…」
「皆さん!お願いします!椎那を助けてください!」
よりにもよって一番近くに居た僕にケイが泣きついてくる。やめろ、離せ。そんな目で見るな。
「…!」
後退りする僕はこの部屋の外から向けられる強烈な視線に気づいた。反対側の部屋からだ。
僕に向けられていた視線の主は僕が視線を投げ返すと持っていた杖で足元の床を突いた。そして『次はお前の番だ』と言わんばかりの鋭い視線を飛ばしてくる。
「お願いします…仕掛けを見つけて下さい。」
ああ、わかったよ。2方向から投げかけられる視線に耐えられなくなった僕はケイを押し退けて床を思いっきり踏んだ。
ドンッ…!という低い音がして外れた床タイルが宙に飛び上がった。
「イーさん、ナイスッス!」
「よく見つけたね、信頼度上がったよ。」
本意じゃないが、褒められるのもあながち嫌いではない。本意じゃないぞ。
床タイルの下では時計のようなものが貼り付けられていた。分針しか付いていない。
「これが仕掛けッスか。適当に動かしてみます?」
「いや、適当に動かしたり、60通り試すのは止そう。回数制限があるかもしれない。」
二人は時計に釘付けになる。ケイはまた知り合いの様子を見に行った。僕はこれ以上何もしないからな。もう出るぞ。
「あっ!あれじゃないんですか!?」
ケイが反対側の部屋の外扉を指差す。ガラスの扉にスプレーで落書きされていたのは24という数字。
分針を合わせるに相応しい。
義父さん、もう少し仕掛けの難易度を上げてもいいんじゃないか?
「それじゃ、早速針を24に動かしてみるッス。」
「ああ、頼んだ。…これで無事に解けるといいが。」
カチッ!
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