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思い通りなはずなのに
〈彩花〉
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り響き、目を覚ます。
昔のことを思い出しながらそのまま寝てしまったのか。
乱れた髪を整え、カバンを取り教室を出ようとした時
「ねぇ」
開けようとした扉がガラッと開いた。
少しびっくりした私は思わず1歩下がる
見上げると、声をかけてきたのは茜だった。
「……なに」
「明日、久々に遊びに行こーよ」
前と違って茶色くなった髪、痛々しいピアスの穴、ツンとくる香水の匂い、少し荒い口調。
もう昔の茜じゃないのだ。
「明菜ちゃん達来るんでしょ、行かない」
「明菜たちが来なかったら来るの?」
「そういう訳じゃ…」
どうしてだろう、話したいと思っていたはずなのに、遊びたいと思ってたはずなのに…勝手に拒否してしまう。
「……あっそ、嫌ならいいよ。誘った私が悪かった、じゃあね」
そう言って教室から出ていった。
私は教室の扉の前で立ちすくむ。
まただ、心が痛い。
キリキリと縄で締め付けられるように苦しい
目元が熱くなる。ポロポロ、ポロポロと涙が頬に伝わる。
泣きたいほどの事じゃないのに、なぜ涙が溢れるのだろう
悲しみが、苦しさが一気に押し寄せ、涙が止まらなかった。
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