思い通りじゃない

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思い通りじゃない

〈茜〉 あの時言っておけばよかった 『ごめん』その一言だけでも きっと私が教室を出たあと泣いていただろう 私が変わってしまったから。 今でも思い出す 夏の教室で髪を切ってあげたこと 最初で最後の告白をしたことを…… 「また髪、切ってあげたいな…」 アルバムをめくりながら呟く、 「あの頃は好きって意味分かってなかったんだろうなぁ……」 写真の彩花をそっと指で撫でる またあの笑顔が見たいな… この思い通りにいかない日々から抜け出したい 早く謝って、ギュッと抱きしめてあげたいのに なのに、今は彩花の名前を呼ぶだけでも苦しい。 ズキッと私を責めるようにピアスの穴が痛む あの頃の黒髪も、見た目も変えたのはただ彩花に振り向いて欲しかっただけなのに…… あぁ、昔に戻りたい そう思いながら茜は眠りに落ちていく
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