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提督の決断
「本艦はこれより前人未到、未知の海域に突入する!」
提督の号令、そして打てば響くようにクルーの返事がブリッジを満たす。
「「「オーッ!」」」
高速戦艦サスケハナは同級のネームシップである。黒光りする無骨な巨体はそれだけで荒波を圧する迫力がある。
続いて、僚艦のポーハタン、サラトガ、プリマスが白波を蹴立てる。
青くどこまでも澄み切った空をみるみる黒煙がけがしていく。遥か水平線には敵地の港が見えかくれしている。
カナガーの国、ハーマンは世界有数の貿易港だ。ただ、万人に門戸を開いているわけではない。
隣接するエドワード、ミート、バランギを含む一帯はフーゾという島国の首都圏である。それだけに警戒が厳しい。
とくにバランキとハーマンは奥まった湾の両翼をなす要衝だけに、守りが固い。
「ランドマークタワーが射程内に間もなく入ります」
ボーハタンが指示を仰いできた。ハーマンの象徴そのものでもあるランドマークタワーには最新鋭の眼が備わっている。
「ようし!景気づけに一発ぶちかましてやれ」
提督は戦意高揚もかくやとばかりに命令を飛ばす。
「OTHレーダー波帯域に感あり!」
「カナガー海軍の周波数と合致します」
「やっちまいましょう!」
電子戦術士官がはしゃいでいる。しかし、提督は眉をひそめた。
「待て、簡単すぎる」
百戦錬磨の勇士ガルブレイス・マシュウは鋭い嗅覚の持ち主だ。ランドマークタワーは索敵の心臓部だ。いくらメリケンの最新鋭ブラックステルスフリゲートとはいえ、接近を許すまい。
罠か。しかし、相手の企みを知るためには積極的に撃って出るしかない。
「いや、殺れ!」
ためらいもなく、安全カバーが押し割られ、必殺の先手が放たれた。
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