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雨の降る庭 第一章 その1
雨が降る日、僕の気持ちは無性に高ぶる。
僕は雨が好きな人間だ。天から降っていき降り落ちて雫となって落ちていく。なんとロマンチックだろうか。
そんな雨の日は僕はその時間だけ学校をサボる。日本庭園の様な場所が通学途中にあり、何時もその雨宿りが出来る場所の椅子に座り雨の滴り落ちる音を聞きながら小説を読む。
コレが何よりも生きがいだった。
しかし、僕には夢がない。高校生で夢がないのはそこまで珍しいことではないが目標すら無いのは少し珍しいかもしれない。しかし、そんな事を僕はそこまで重要視せず一枚一枚小説をめくる。
その時、一人の女性が反対側の椅子に座った。大人の女性だ。小説を読みながらチラチラと気になり見ていると、缶ビールを飲んでいた。朝っぱらから缶ビール。色々、疲れていることがあるんだろうなと思いながら僕は小説を読んでいた。
女性はそのまま缶ビールを2缶飲んでこう言った。
「そこの青年くん、何を読んでいるの?」
僕はビクッと震え恐る恐る女性を見たら笑顔でそう言っていた。
コレが僕と女性の雨の日のファーストコンタクトだった。
この日、運命の歯車は動き出した。
僕と彼女の歯車が。
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