第二十七章 危険な二人

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第二十七章 危険な二人

二人は恋人同士のような距離感で並んでいる。 表情も緩んで、なんだか仲良さそうに寄り添っていた。 アキヒトの叫びに二人はハッとした顔をする。 自分に内緒で会ってたのか?と思うと 頭に血が昇ってきた。 「何、してるんですか?」 思ったよりも冷静な声が出て、自分でも驚くが 「アッキーこそ、何してたん?」 と彼に問われ、 さっきの葵さんとの状況を思い出して口ごもった。 “あれは浮気には入らないよな。” とは思うが、誤解されても仕方のない状況ではある。 「電話したんやで、何回も。」 ハルカさんが言い、アキヒトは携帯を確認した。 結構な量の着信が入っている。 「なあ、どこにいたん?」 ハルカさんの声のトーンが優しくなるが、急に眉をしかめた。 「!?」 「アッキー、ここにおったんやね。」 豊かな胸元を押し当ててくる柔らかな感触に驚いた彼は 声の主を見る。 “いつの間に!” 葵さんがアキヒトの腕を取り、そっと組んできた。 「ハルカ、うちらずっと一緒におったんよ。 せやからアッキーはあんたの電話に出られんかったんや。ごめんな。」 ちっともゴメンと思っているように見えない 勝ち誇ったような顔で、 葵さんはそう言った。 こんな人だったっけ? 「葵さん、やめてください。」 アキヒトがその腕を振り払うようにすると、 「うちの胸、触ったくせに。」 とニヤニヤしながら言われる。 「う。」 触った、と言うより触らされたの方が事実だが 触った事には変わりはなかった。 「アッキー、葵と一緒やったんか?」 「は、はい。」 淡々と聞かれて頷くと、彼は悲しそうに笑った。
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