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第二十章 再会 その2
「ホストから足を洗って、今は現場仕事してんねん。」
翔喜はハルカの隣に座ると、説明した。
「現場帰りで、みんなで飲んだ後に
一人で飲み直そうと思ってここに来てん。
まさか姫がいるとはね。」
さわやかな笑顔だった。
「すっかり改心したようやね。」
ハルカが言うと、彼はさらに笑った。
「こっちのが向いてると思ってな。
それに嫁さんと子供に胸張れる仕事がしたいしな。」
「結婚したんか?」
そんなことに縁のある男だとは思ってもいなかった。
意外だなとハルカは思った。
「せや、松井帆菜っていたやろ?」
切りつけてきた子やろ?と聞くと、彼は頷いた。
まさかとは思うが
「あの子と結婚したん?」
「せや。」
「嘘やん!」
かなりの衝撃だった。
彼がホストを辞めた後、彼女が翔喜のマンションに押し掛けてきたらしい。
“大事な顔に傷をつけたから、うちが責任取る。”
と鼻息荒く言われたそうだ。
なんだか面白い女だと思い、
マンションを引き払って彼女と同棲することにしたのだとか。
「貯金もあるし、食うに困るというわけやなかったけど
普通の家庭を作ってみたくなったんやな。」
彼女と暮らすようになってから、土方の仕事をするようになり
ほどなくして帆菜は妊娠した。
「順番逆やけど、それで踏ん切りがついたっていうかな。
彼女の両親にあいさつしてから入籍してん。
来年は俺、親父やで。信じられへん。」
と言う翔喜はとても幸せそうに見えた。
「そうか、おめでとう。」
ハルカが微笑みながら言うと、
「姫は?」と聞かれた。
「あの若い子と上手くやってるか?」
ズキッと胸が痛くなる。
アキヒトのことを考えると正直気が重かった。
今の翔喜になら腹を割って話せそうな気がする。
ハルカは思い、自分の悩みを打ち明けることにした。
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