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第二十一章 カミングアウト
「……ハルカ姫、男やったんか。」
全然わからんかったわ、と翔喜に言われて彼は苦笑いした。
「ごめんな、隠してたわけやないんやけど。言わんとわからんもんな。」
「いやいや、俺も別に確認したわけやないしな、
そういう子がいても不思議やあらへん。店にも来てたし。」
と、ホスト時代の話をしていた。
「俺になびかん女は珍しいと思っていたけど、男ならしゃあないわ。」
そう言って、笑い飛ばす。
随分さっぱりとしたところがあるのだな、
とハルカは彼を見直していた。
「女になる気はあるん?」
「ううん。僕は男やと自分で思っとるしその気はあらへん。
だけど。」
とハルカはそこまで言って口ごもった。
“アキヒトが望むなら、性別を変えてもいい。”
「あの子のことが本当に好きなんやな。」
「……うん。」
「若いから心配なんやろ?」
心配、と言うか
彼の将来を考えると
自分が道を外させたくないと思うだけだ。と口にすると、
「それはハルカ姫のエゴやで。」
真剣な顔をした翔喜に諭される。
「もし道を外したとしても、それは本人の責任や。
ハルカ姫のせいやないし、
ハルカ姫はそれを肩代わりすることはできひん。」
人の人生背負えると思うなんて、エゴでしかない。
せいぜいできて手助けやで、と言われる。
「ま、偉そうに言ってるけど
ウチの親父の受け売りやけどな。」
翔喜はカラリとした笑顔でハルカに言った。
子供が出来たと自分の父親に報告に行ったとき、
そう言われたのだという。
「ええ親父さんやね。」
「ただの田舎のジジイと思ってバカにしとったけど
凄い親父だってようやく思えるようになったわ。」
自分も父親になるという自信からだろうか、
翔喜が大きく見える。
ハルカは彼がうらやましくなった。
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