第一章 雪深々(しんしん)と積もり、音も無く夜が来る

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 山の天気は変わり易いと聞くが、念のため週刊予報を確認していると、今日の夜から吹雪くとアナウンスしていた。ならば、吹雪く前に到着したいと、本村の部屋に行くと、準備は途中のままで散らばり、本村が仕事をしていた。  この調子では、早めの出発どころか、夜になっても出発できない。 「本村、適当に詰めればいいのか?」 「……ああ、頼む」  本村の姉が所有する別荘なので、事前にトイレットペーパーなどの日用必需品は運び込んだと聞いている。だから、今回の荷物は着替え程度でいいのだが、部屋中に物が散らばっていた。 「非常食、懐中電灯、スキーウェア、そり?」  部屋にそりがあるとは思わなかった。 「管理人の家に犬がいると聞いたから、犬そりをしようかと思ってね……」 「!!分かった」  これは必需品だ。暇が予測される別荘なので、遊び道具は多い方がいい。
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