第一章 雪深々(しんしん)と積もり、音も無く夜が来る

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 高速を走っていると、じっとりとした重い雲が空にかかってきて、あっという間に正面の山を隠していった。これは、雪になるなと思っていると、粉雪が舞い始め、次第に風が強くなってきた。 「夏目、ここから先はチェーン装備だ」 「分かった」  高速道路の指定されたエリアで、タイヤにチェーンを巻いていると、風が強く吹き付け、手が痛いほどに寒い。吐く息も凍るようで、目の前でキラキラと粒になっていた。更に、息を吸うと、肺が寒さで痛くなる。 「夏目、車に乗っていてもいいよ」 「手伝う!」  腕力の問題で、たいした事は出来ないが、こういう作業は俺の方が慣れている。 「本村、燃料は満タンにしておいてね。それと、灯油もお願い」 「そうだな。店が閉まる前に、行っておくか」  風が強いせいか、体感温度が半端なく寒い。チェーンが巻き終わると、車の燃料を補給するためにガソリンスタンドに入った。本村は灯油も頼んでいて、入れて貰っている間に、俺は走って横のコンビニに入った。
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