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「泣き虫な晴ちゃん、僕がいなくなってもちゃんと笑っていられる?」
小さな欠伸をした晴子に泰介が問いかけた。程よくクーラーの効いた部屋で映画を観終えたあとのことだった。家族愛を描いたラストシーンで、ひどく感動した晴子が涙を流した。どうしてか恥ずかしがった晴子はとなりにある泰介の肩に顔を押し当てて涙を拭うから、彼のトレーナーに染みが付いていた。
「泰介くんはいなくならないでしょう?」
鼻にかかった眠気声で晴子が言った。
「困ったね。晴ちゃんの貯金はまるで貯まらなそう」
「そんなことないもん。だから一緒に寝よう?」
晴子がそう言うと、泰介が笑った。
「眠いって言えばいいだけなのにねえ」
それから「ちゃんと一緒に寝てあげるから」と、泰介が晴子の頰をふわりと撫でた。
晴子には夢がある。泰介は彼女の夢を誰よりも応援していた。
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