王女様の策略

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「どうなさいますか? 私から継承権を剥奪されますか?」  笑みを含んだ声で、王女様は言葉を紡がれます。国務長官も、大臣も、カールシュテイン様も、王陛下も、王女様以外はどなたも言葉を発されませんでした。 「果たして、陛下にそれができるでしょうか? 王妃が亡くなった今でも、王妃を深く愛していらっしゃる陛下ですもの。新しい妃をお迎えするなんてこと、おできになるはずがありません。ならば陛下の血を引き継げるのはこの世でたったひとり、私だけですのよ? 何よりもご自分の血を重んじられる陛下が、私から継承権を剥奪することができますか? 陛下の血を残すそれだけのために、この国の制度さえも変えられたというのに?」 「何を仰る」と辛うじて言葉を挟んだのは、法務大臣でしょうか。王女様は、大臣に視線を向けられます。けれどもそれきり言葉を続けられない大臣を一笑に付し、ひとことひとこと、はっきりと言葉を繋いでいかれます。 「それとも死罪にでもなさいます? 私はそれでもかまいませんわ。処刑の場で全て明らかにしてさしあげます。陛下が自ら率先して、女の権利を保障した。聡明な王妃が残した聡明な王女が女であるという理由で継承権がないのは遺憾だ、でしたかしら。けれども、男も女も等しく重んぜられると叫びながら、そう叫ぶ陛下こそが、王妃を顧みず女官を慰みものとし、その尊厳を踏みにじっている。お母様も、シルヴィア妃も、陛下のためにどれほど苦しんだことか。そんな陛下の下に集う貴族ですもの。彼らの意識も、依然として女を蔑むもの。聡明な王女はそれを憂い、立ち上がった、と」 「詭弁だろう。お前は、あの男と一緒になりたいだけだ」  低く、吐き捨てるような声は、王陛下のもの。けれども王女様は、陛下の言葉でさえも、一笑に付されました。 「いけませんか? 陛下だって、シルヴィア妃を手に入れるために手段を選ばなかったのでしょう? レオンの両親の恋こそが、真の恋でした。それを不義の恋にしたのは陛下です。他に愛し合う相手がいるシルヴィア妃を、その権勢で強引に手に入れた。だから私も、同じことをしたいだけなのです」
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