王女様の策略

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   レオンは孤児院で働く青年です。けれども、ただの平民の青年ではございませんでした。もしもレオンがただの平民であったのなら、王女様と結ばれることも、全くありえないことではなかったのかもしれません。それが、限りなく可能性が低いことなのだとしても。  王女様が孤児院を慰問されたときのことです。レオンの灰色の瞳が王女様を見つめ、青い瞳がそれを見返されたとき、わたくしは思わず息を止めました。ふたりの間をとりまく空気はあきらかに熱を持っていて、それを吸い込んだわたくしの喉は、ひりひりと焼けつくような心地がしました。王女様を愛するだなんて、平民のくせに何と分を弁えないのだろうと思いました。けれども同時に、王女様の御心を拒絶するようなことも、許しがたいことだとも思いました。王女様は、レオンがただの平民と思い込んで、彼に恋をされました。レオンの方はすでに全てを知っていたのに、それでも王女様を愛しました。きっと、いつか引き裂かれるのだと、判っていながら。  だって、レオンはシルヴィア元妃の子なのですから。シルヴィア元妃は、王女様のお母様であらせられるお妃様――エミリア妃の前に、お妃様だったというだけではありません。シルヴィア元妃は、不義の子を身ごもり、王宮を追われました。その不義の子こそが、レオンなのです。
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