王女様の策略

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 その日の夜、兄が、わたくしの部屋を訪ねてきました。 「シーラ、王女様のことだけど、何か変わったご様子などないかい?」  そう問われて、王女様のうつくしい筆跡が頭をよぎりました。どきどきと早鐘をうつ胸をなだめながら、「さあ。いつもと変わらないご様子だけれど」と、わたくしは答えました。「そうかい」と、どこかほっとした様子で兄は椅子に腰を掛けます。 「今一度、お父様より言付けだ。レオンのことは、誰に何を聞かれても知らぬ存ぜぬを通すようにと。明朝、また記事になるようだ」 「ええ、分かっているわ」  わたくしが目を伏せると、「苦しいだろうけれどね」と、兄はやさしい声を出しました。わたくしは苦しくなんかないわ、と心の中で言い返します。レオンなど何と言われようと、わたくしは構いません。けれども、レオンと親しくしていた兄はそうではないと分かっているので、わたくしは何も言いません。
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