4.洞窟調査書

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 報告その一(聞き取り記録)             調査チーム 作業員(ポーター) ヘムラ・ウルマ  私は発掘チームの機材などが入った荷物を運ぶポーターでした。土を掘るためのスコップやシャベルなどが入ったそりを仲間数人と引くのが仕事でした。  この仕事を引き受けた理由は簡単です。給料が良かったからです。普通の土木工事に比べたら三倍はありましたから。しかも、雇っていただける期間が長い。遠い場所だから往復に三カ月はかかります。まとまった金が手に入るので、家族に楽をさせられると思い。すぐに応募したわけです。  出発する前、「調査中に起こったことは一切他言しない」という誓約書にサインしました。今こうして喋っていることが、契約違反だと訴えられたりしないですよね。いくら金が良くても、体は壊すし、こんな場所で隔離されるし、いいことは何もなかったですよ。早く女房と子供に会いたいです。子供は来月一歳になるんです。かわいい盛りなんですよ。  話が脱線しましたね。あの洞窟は本当に凄いものでした。何万期もの間、氷の下にあったのに、入口はコンパスで正確に描いたような円形をしていました。鉄道のトンネルを巨大にしたような感じです。学のない私でも、すぐに人工のものだと分かりました。あの灰色の岩石はとても硬いものです。それをあれほど正確に繰り抜くにはそれなりの機械と技術がいります。周りの学者先生たちは興奮していました。その気持ちは理解できます。学者でない自分ですらあの威容を見たら、足がすくみましたよ。
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