4.洞窟調査書

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 洞窟の入口は三階建ての家ほどの高さがありました。驚いたのは、その壁面です。機械で岩をくり抜いたような筋が奥まで真っ直ぐに刻まれていました。でも、あの硬い岩を掘り進む機械なんて…この世には存在しないと思いました。所々には、家の壁や舗装道路に塗るようなものも貼り付いていました。恐らく落盤や漏水を防ぐためのものでしょう。とにかく、あんな洞窟は見たことがありません。自分たちとは別の世界の人間が作ったんだと思いました。それも、すごく技術の進んだ人たちによってです。  入口からしばらくの間は土砂や岩が粘土質の土とともにたくさん詰まっていました。落盤のようにも見えましたが、トンネルの天井は崩れていなかったので、入口を塞ぐために意図的に詰め込んだものだったのでしょう。三日ほど掛けて、その障害物を取り除いたあと、私たちは洞窟の奥に進みました。  もちろん中は真っ暗で、唯一の頼りは自分たちの頭につけた明かりだけです。最初は何も思わなかったんですが、何時間か進むうちに、この穴が底なしのような気がして、嫌な気持ちになってきました。みんな同じような気分を味わっていたと思います。でも、仕事だし、みな黙々と暗闇の中を地の底に向かって歩きました。
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