4.洞窟調査書

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 私のプライドを賭けて訴えますが、私のつくった料理に原因があるとは思えません。結局は調査隊のほとんどが具合を悪くしましたが、症状がでるのに随分と時差がありました。食中毒の類ではないと確信できます。もしそうなら、全員が同時におかしくなっているはずです。それに、料理と言っても、缶詰の材料にちょっとだけ手を加えて、いろいろとミックスして料理らしい体裁を整えただけのものです。人の生死に関係するような病気を引き起こすはずがない。もしあったとしたら、缶詰の材料そのものに原因があるはずですよ。  いろいろと聞かれているうちに、私の料理が疑われていることを感じていました。ですが、私を疑う前に食材をきちんと調べて下さい。そこにも問題がなかったのなら、洞窟内の水を調べて下さい。水は重量があるので、必要最低限しか携帯していきませんでした。調理には湧水を使いました。壁のひび割れから結構染み出ていましたよ。それを容器にためて使いました。もちろん熱湯消毒はしました。水の素性が分からないから、いつも以上に長時間煮沸しましたよ。あれを生き延びられるような病原菌はいないと思います。  ヘムラがそれほど重症ではなかったと聞き、良かったと思いました。私も運び役を務めたことで、洞窟から早く出られました。長く居たら他のメンバーと同じような運命を辿ったかと思うと、背筋が寒くなります。ヘムラの乗ったそりを引いて、真っ暗なトンネルを一日かけて歩いたのは、辛く、苦しい経験でしたが、重症のメンバーに比べたらマシですね。私はツイていたのか、いなかったのか、今となっては全く分かりません。 (記録者・エリム・タウロス王宮警察本部刑事部参事官)
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