5.途切れた調査書

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 曽祖父ハムス・カーの書簡は、どれも達筆で美しい文字で記されていたが、このメモだけは殴り書きのように字が乱れている。よほど慌てて書き写したのだろう。  僕は全ての書簡を読み終えて、考え込んだ。 前文明が築いたと思われる巨大な洞窟は、まるで炭鉱のようだ。しかし、それは所々意図的に埋め戻されている。あたかも人の目から隠すように。氷河が融けなければ、誰もその存在に気付くことはなかった。 誰にも知られたくない構造物をなぜ造ったのか。五千メタの洞窟を掘るとなると、人力だけなら数十期は必要になる。我々が知らない機械や技術が発明されたとしても、地下四百メタまで掘るのは、並大抵のことではない。これだけの労力(そして費用)を投入して、この洞窟を掘り下げた人びとは、相当な財力と権力を持っていたはずだ。 最も簡単な答えは、かつての王族の墓。それならは誰の目にも触れないように、さまざまな方法で封印した理由も頷ける。永遠の墓所であった神聖な場所を調査隊が荒らしたので、呪われてしまったのか。
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