5.途切れた調査書

4/4
前へ
/130ページ
次へ
 結局、どれだけ考えても結論がでるはずはない。ハムス・カーの書簡は、謎を示してはいるが、肝心な部分には触れていない。内容が中途半端に途切れている。  曽祖父は遺言書の中で、この書簡類に目を通すだけで、全ての謎が解けるような書き方をしていた。なのに、謎を提示しただけで終わってしまうのはおかしい。僕の前にこの書簡を目にした一族のものが、重要な部分を隠した、もしくは消去した。その可能性は拭えない。 <このまま終わる訳にはいかない>  この洞窟が実在するのであれば、世紀の大発見であることは論を待たない。それは王立アカデミーの上奏文にもはっきりと記されている。では、歴史を覆すような大発見を、なぜ王立アカデミーは封印してしまったのか。学術的な損失を埋め合わせるものと言えばその存在はただ一つ。政治だ。  遺言書でも警告されていたように、僕はこの謎に大きな危険が隠されているのをひしひしと感じとっていたが、それを上回る好奇心を抑えることができなかった。
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加