6.テッドの助言

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「随分久しぶりじゃないか。この前会ったのはカルー文書の解釈をめぐった相談だったよな。もう一期半も前のことになる。例の彼女とはうまくいってるのか」  テッドは変わらぬ鷹揚な語り口だ。電話の向こう側の表情までが手にとるように分かる。 「彼女とは半期ほど前に別れたよ。不義理しててすまない。いろいろと忙しくてね」 「それは僕も一緒だ。アカデミーには不要不急の雑務が多過ぎる。これがなければ、もっと研究が進むんだがな」  テッドは乾いた声で笑った。永世理事の一族として、将来の理事就任が約束されている僕と違い、テッドは学術委員の推薦を受けるため、今はアカデミーの助手として働き、仕事ぶりや実績をアピールしている。 「ところで…」  笑いが収まったタイミングで僕が口を開くと、テッドがすかさず答えた。 「何か相談事があるんだろう。いつ会おうか。今夜だと時間が取りやすいのだけど」 「それでは、午後七時からはどうだい」 「場所はいつもの店?」 「いや、ちょっと込み入った話なので、王宮通りのバー『穴倉』はどうだい。三、四期ほど前に一度行ったことがある」 「あの個室ばかりの不思議なバーか。どうしても人に聞かれたくない話なんだな」 「ああ、こればかりはな。テッドだから打ち明けられる話さ」 「覚悟して行くとするよ」  電話口の向こう側から、再びテッドの笑い声が届いた。
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