7.王立ホルムン療養所

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 僕は適当な理由を拵えて学校の研究室を休んだ。そして、王立療養所に向かうため、テッドとの穴倉会合の翌日夜に首都の駅から長距離列車に乗った。  療養所は王国の北の外れにある。伝染病などをできるだけ首都から遠ざけるため、辺鄙な場所につくられたのだ。オムスの遺跡があると思われる場所からもそれほど遠くない。  燃石を焚く蒸気機関から燃油を用いる内燃機関に動力が変わって十数期経ち、列車はかなり高速化されたものの、ホルムン駅までおよそ二十時間。翌朝早くに到着する。さらに、そのあと乗り合いバスで三時間。療養所には明日の昼過ぎには辿り着ける。生まれて初めてといってもよい長旅だ。  宿泊の段取りは何もしていない。現地で手配するつもりだった。家族には研究室の調査のため、二、三日留守にすると伝えてある。
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