7.王立ホルムン療養所

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 列車に揺られている間も、僕はずっとオムスの遺跡ついて考え続けた。幸い、一等客室には他に乗客はおらず、車窓に写る自分の顔をぼんやりと眺めながら、考えに集中することができた。  遺跡に何が隠されているのか―。それが分かったら、この大発見を葬り去る決断をした訳が明らかになる。今はまだ皆目見当もつかない。ただ、言えるのは政治的な理由だけでは、それを説明できないことだ。遺跡の存在は王国のみならず、惑星の歴史そのものを大きく塗り替える。その真実を秘匿し続けることなんて、できるはずがない。いずれ誰かが明るみに引きずり出す。  その昔、僕らの星が世界の中心にあり、太陽や数多の星々がその周りを回っていると考えられていた。しかし、それは科学の力で間違いだと証明され、旧来の学説を唱えていた科学者は歴史から永遠の批判にさらされている。その経験がアカデミーにはある。もし、遺跡の存在という明確な事実を秘匿してしまったら、決断に関与したアカデミーの幹部たちは後世の歴史家たちに酷評されるだろう。歴史上の評価を何よりも重要視するお偉方がそんな簡単な理屈に気付かぬはずはない。 <遺跡を闇に葬り去ったのは、歴史が変わってしまうという単純な理由だけではない。何か別の訳がある>  僕はとりあえず、中間的な推論を下した。
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