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列車内の有り余る時間でもう一つ考え抜いたのは、どうやってオムス事件の生き残りの情報を探るかだ。今はそれが誰なのかも分からない。名前も知らない人間のことを調べるのはデリケートな作業になる。迂闊に質問を投げ掛けて療養所の職員に不審の念を抱かせてしまったら、調査はそこでお終いになってしまうかもしれない。いろいろと考えた挙句、僕はいつもの歴史調査の手法を使うことにした。幸い、僕には永世理事の一族という特権がある。
人影がまばらな寂しいホルムン駅の前から療養所に向かうバスは、年季の入ったオンボロで、乗客は僕一人だった。粗末な市街地の様子を観察するまでもなく、バスはあっという間に郊外へと進んだ。民家はほとんどなく、北方の荒涼で単調な光景が広がるばかり。空は鉛色に垂れ込め、今にも雪が落ちてきそうだ。やがて道路は砂利道に変わり、より一層乗り心地が悪くなった。調査の行く末を暗示しているようで、僕は不安を募らせた。車体が余りに揺れるので、乗り物酔いも加わり、散々なバス旅となった。
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