7.王立ホルムン療養所

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 国立ホルムン療養所は、伝染病患者やその回復過程にある患者を収容する医療機関で、灰色の塀に取り囲まれた巨大な隔離施設は、壁色まで灰色に統一され、ご丁寧に窓には鉄格子がはめられている。一見して監獄を思わせる。国内に十カ所ほどある他の療養所と同じく、見るものをして肝胆寒かしめる雰囲気をかもしだしていた。 「突然お邪魔して済みません。王立科学大学の学生でジェド・カーと言います」  僕は療養所を取り囲む塀の一角にある受け付けを訪ねた。 「王国の伝染病対策について勉強していまして、この療養所の歴史について調べさせていただきたいのですが…」  おもちゃの兵隊が似合いそうな詰め所の前に、制服、制帽姿で厳格だけが取り柄の老人の警備員が立っていた。 「約束はしていますか。来客者名簿にはないようですが」 「済みません、突然のことで。親戚の葬儀があってホルムンの街に来たのですが、この療養所のことを思い出し、訪ねさせていただきました。ここまで来られるチャンスはそうそうありません。約束がないとダメですか」  警備員の老人は首を傾げた。 「ご覧の通りの施設ですので、誰でも中に入れる訳ではありません」 「それは重々承知しています。ですが、親戚の葬儀は突然だったので、訪問の予約を入れる余裕はありませんした。何とかなりませんか」  警備員は困ったような顔つきをした。僕は食い下がった。 「この機会を逃すと、ここに来られるのは何期後になるか分かりません。お願いします」 「そう言われてもねえ。規則だから。私の判断で勝手に入れる訳には…」  警備員はそう言うと、元の無表情に戻った。 <仕方ない。奥の手をだすしかない>
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