7.王立ホルムン療養所

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 僕はそう決心して、身分証を出した。 「私の父はデュラン・カーです。調査を拒否すると、アカデミーが黙っていませんよ」  身分証は特権階級であることを表す黄金色の縁取りがあった。  途端に警備員の目の色が変わった。 「少々お待ちください」  老人は詰め所に入り、内線電話で何やら相談していた。やり取りはすぐに終わった。 「あなたも人が悪い。最初から身分証を提示してくれれば、すぐにお通ししたのに」  警備員はバツの悪そうな顔をした。 「いえ、こちらこそ事前に連絡せずにすみません。あなたの職業倫理は素晴らしいですね。アカデミーにきちんと報告させていただきます」  老人の頬に赤みが差した。 「どうぞお入りください」  僕の目の前で、重そうな鉄の扉が開いた。
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