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僕は凍り付いたように、すぐには返答できなかった。ルルは部屋の片隅を指さした。その先に監視カメラがあった。ルルはゆっくりと話し始めた。
「あなたはホルムンに親類などおられない。あなたは何か目的をもって、ここの資料を調べにやって来た。違いますか」
「どうして…そのようなことを」
ルルは無表情のまま、僕を見ていた。そして、小さな溜息を一つ吐いた。
「ホルムンではここ一週間ほど葬儀はありませんでした。ライムという一族もホルムンにはいません。カーという立派な一族の方がどうしてそのような嘘を?」
「それは…」
思わぬルルの攻撃に、僕は適当な言い訳を思い付くことができなかった。ルルにその気があったら、虚偽の申し出をして資料を漁った僕を警備員に通報することさえ可能だ。たとえ永世理事一族という特権があっても、あの厳格な警備員は今度こそ笑顔で送り出してはくれまい。
「このような辺鄙な場所まで、わざわざやって来て、寒々とした部屋で五時間も調べるほど大事なことがここにはあるのですか。その訳をぜひお聞かせいただきたいわ」
ルルの視線は一層厳しいものになった。地味な事務員というイメージは最早ない。尋問者のような顔つきで、僕を睨みつけていた。
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