3.上奏

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3.上奏

3. 上奏 上申書 王立アカデミー 総裁 サンバント・アルラ殿 王立科学大学 考古学研究室教授 アイラ・ケルヒ  最初にその報告がもたらされたのは、資源省の調査隊によってであります。それは高緯度で寒冷な辺境にある小島に、人工のものと思われる巨大な洞窟が発見されたとの一報でした。調査隊が帰国後、資源省を通じてその写真とスケッチを確認しましたが、洞窟の入り口はきれいな楕円形にくり抜かれており、自然の造形物ではないと直感致しました。私の五十期に及ぶ考古学研究において、これほどの劇的な発見はございません。その画像を見た瞬間、体中に鳥肌が立ちました。  当該地域は近年の温暖化によって氷河が融解したため、厚い氷の下から地表が露出し始め、それ故に地下資源の調査が行われた地域であります。地質学者の推定によりますと、過去最大五万期にわたって、氷河に閉ざされていたとのことでありますので、その遺物はそれ以前に建造されたものであると推察できます。実に驚きであります。
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