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第三章 ドラゴン
最近、ドラゴンさんの様子が変だ。まあ、最初からぶっきらぼうで失礼な性格をしているな、とは思っていたが、最近は前にも増して奇行を繰り返している。
そして、私は更に嫌われてしまっている……気がする。
この間なんて、ヴィヴィの作った薬品の試験だとか言って、すごい怪しいまずい飲み物を無理やり飲まされた。本当はドラゴンさんがいつも飲んであげているらしいが、まずいので飲みたくないらしく、私がその場にいたので丁度良いと責任を押し付けられた。
飲んでみると、確かにその薬はどうしようもなくまずかったのでドラゴンさんの気持ちがわからなくもないが、そんな物を他人に押し付けないで欲しい。
また、私が森の中を彷徨っていると、前までは黙って見ていたのにこの間は「家に帰れ」と怒られた。私の顔をあまり見たくないらしい。でもわざわざ家まで送ってくれたりするので憎めない。
妖精もヴィヴィも割とはっきりと物言いをしてくれるので、ドラゴンさんのよくわからない態度には戸惑ってしまう。時々優しいのに、私を避けているような気もするし、かと言って完全に拒絶されている訳ではない。
と思っていたら、不思議なことが起きた。
「それじゃ、緑の方にしようか」
「…………」
「緑の花びらと緑の羽で良いの?緑ばっかりだね。うん、可愛いと思う!」
「…………」
「できるの楽しみ?じゃあ頑張って作るね」
「…………」
「……ドラゴンさん、いつまでここにいるの?」
「ん?」
私と妖精が話しているのを静かに眺めていたドラゴンさんが、ベッドの上で座ったまま不機嫌そうに首を傾げた。もちろん、ドラゴンのままだと家に入れないので人間の姿をしている。
人間の姿のドラゴンさんは少し人間離れしている。髪は普通に黒いけど、目がドラゴンの時のままで紅いし、背も高めだし、意図すればなぜか羽だけ生やせる。でも、それ以外は私と同い年ぐらいの普通の人間の男の子だ。服はなぜか古代の民族のような俗世離れしているものだが、似合っているので良しとしよう。
「俺のことは気にするな。お前は仕事に集中しろ」
「はあ……」
「…………」
「…………」
気まずい。正直とても気まずい。
妖精と二人きりだと独り言のように楽しくお話ができるのだが、他に人がいると何を言えば良いのかがよくわからない。しかも、私はベッドの方を向いて床に座り、ベッドと私の間に作業台を置いて作業をしているので、顔をあげればドラゴンさんと目が合う状況になってしまっている。
ので、とりあえず黙ったまま妖精の服を作る。
その間、ドラゴンさんはずっと妖精の服を作る私を静かに眺めていた。
「……ねぇ」
「なんだ」
「ドラゴンさんって、いつからこの森にいるの?」
せっかく話せる機会なので素朴な疑問をぶつけてみる。その時私が服を作っていた妖精は、あまり興味がないようで部屋の中を散策していた。ドラゴンさんは相変わらす私のベッドの上で片膝を立てて座っていた。
「生まれた時からだ」
うん、それは知ってるなぁ。
「えっと、生まれてから何年くらい?」
「年齢は正確には測っていないが、ヴィヴィにこの間十六の誕生日を祝われた」
十六。年下かな?しかし自分の年齢を思い出せないので比べようがない。
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