第三章 ドラゴン

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 「ヴィヴィさんと仲良いよねー。生まれてからずっと一緒にいるんだもんね。ヴィヴィさん、ドラゴンさんも大きくなったなぁ、って惚気てたよ」  私の言葉にドラゴンさんは目を数回閉じては開いて、ふと私から目を逸らした。あ、照れた、と思った。目を逸らされるのは基本的に嫌いだが、これは許せる。  「……あいつはなんでずっと容姿が変わらないんだろうな」  「え、ずっとあんな感じなの?」  「俺が知る限りはな」  「さすが魔女だね。どのくらい生きてるんだろ?」  と苦笑いする。ドラゴンさんは目線を私に戻した。  「あいつは、先代とも知り合いだったらしい」   聞いたことのない人の話が出てきた。首を傾げる。  「先代?」   「先代ドラゴンだ。森の守護者は死ぬと数年後に新しいのが生まれる仕組みになっている」  「へー。後継者争いとかなくて便利だね」  「……そうだな」  「ドラゴンって死ねるんだ、そもそも」  「寿命では死なない。先代は人間に殺されたらしい」  急に物騒な話題になった。ドラゴンさんは最初から「人間ごとき」などと言っていたから人間のことは好きではないのだろう、と思っていたけれど。  「やっぱり、ドラゴンと人間は仲悪いのかな」  「人間は不条理で非道なことを平気でする生き物だからな」  さらっと私の種族の悪口が言われる。  「私も人間だけど、どう?」  「どう……って言われても」  「ま、ドラゴンさんはあまり人間と関わったことが無いようだし、これから知ってけば良いと思うよ。人間に嫌われても、別に何も得しないでしょ?」  ドラゴンさんは言葉に詰まっている様子だ。私が少し怒っているのに戸惑っている様子なので、もうやめてあげよう。  「じゃあドラゴンさんは、ヴィヴィさんと妖精さん達以外に知り合いとか居ないの?」  「……ああ。ドラゴンは基本的に世界に一頭しか存在しない。だから、先代はヴィヴィに俺の世話を頼んだそうだ」  私は、失礼なことを言われたことを除き、ドラゴンさんが私とまともな会話をするだけでなく、自分から話をしてくれていることに感動していた。お互い人間の姿だから物理的に共感しやすくなっているのだろうか。  思わず笑顔になる。  「じゃあ、お母様みたいな感じなんだ」  「母親がどういうものなのかはよくわからないが、お前がそういうならそうなのだろう」  「私もあんまり知らないけどね」  「そうか、お前、記憶なくなってるんだったな」  この人はそんな重要なことを忘れていたのだろうか。少し苛立ったが正直私も忘れかけていたので人のことを言えない。  「うん。別にそれ自体はどうでも良いんだけどね」  一旦製作中の妖精の服を作業台の上に置く。ドラゴンさん機嫌悪くないみたいだし、聞いてみようかな、と思ってドラゴンさんと目を合わせる。  「そもそも私、なんで記憶がなくなってるの?」
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