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ドロテアがバハルの方を向いた。
「お願いできますか?」
「ちょっ」
アメルは無視された。
「もちろん」バハルは歯の見えそうで見えない笑顔で答えた。「女将さん、お金はツケでお願いします」
「久しぶりだね。良いんじゃないか?じゃあ、私は仕事あるから。また来てね」
女将はそういうと厨房(かと思われるところ)へと消えていった。
バハルが二人に向かって、
「では、行きましょうか」
と言い、店の扉へ歩き出す。彼の革の靴が土っぽい床に当たって硬い音を立てる。
「はい、よろしくお願いします」
満面の笑みで返事したドロテアを斜め後ろから眺め、アメルは今日何度目かのため息をついた。ドロテアの肩を軽く叩き、彼女の耳に囁く。
「何かあっても私の責任じゃないですからね」
「ええ、もちろんよ」
少女は小声で、しかしハッキリと、言い返した。
三人は店の外に出て、バハルの示す方向に歩き出した。
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