第三章 王女

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 ドロテアがバハルの方を向いた。  「お願いできますか?」  「ちょっ」  アメルは無視された。  「もちろん」バハルは歯の見えそうで見えない笑顔で答えた。「女将さん、お金はツケでお願いします」  「久しぶりだね。良いんじゃないか?じゃあ、私は仕事あるから。また来てね」  女将はそういうと厨房(かと思われるところ)へと消えていった。  バハルが二人に向かって、  「では、行きましょうか」  と言い、店の扉へ歩き出す。彼の革の靴が土っぽい床に当たって硬い音を立てる。  「はい、よろしくお願いします」  満面の笑みで返事したドロテアを斜め後ろから眺め、アメルは今日何度目かのため息をついた。ドロテアの肩を軽く叩き、彼女の耳に囁く。  「何かあっても私の責任じゃないですからね」  「ええ、もちろんよ」  少女は小声で、しかしハッキリと、言い返した。  三人は店の外に出て、バハルの示す方向に歩き出した。
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