第四章 ドラゴン

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 でも、ドラゴンさんとヴィヴィと仲良くなれた気がするからこそ、彼らが私に何か隠し事をしているのが悲しい。私の事を、やっぱり部外者だと思っているのだろうか。それは嫌だな。今の私の世界は彼らと妖精しかいないから。  そんなにいるのも多い気がするけど。  また空をみる。雲の形ははっきりとしていて、眩しすぎない空間が心地よかった。あの雲、ちょっとだけドラゴンさんの頭の形に似ているような気がする、とさっきと似たような遊びをして時間を潰す。  「愛着湧いてしまってるじゃない、ミシュカ」  と呟いた。  自分の独り言になぜか鳥肌が立った。  「おい、ミシュカ、起きろ」  ハッと目を開け、右を見るとドラゴンさんがこっちを見ていた。  「あ、おはよう」  朝じゃないけど、と思いつつ挨拶をする。  周りを見ると、まだ日が暮れる時間ではない様だ。私はどれくらいの時間、寝ていたのだろうか。  あ、そういえば、家から出た事を怒られるのではないだろうか。と思い出して少し身構えたが、よく見るとドラゴンさんはなぜか機嫌が良さそうな顔をしていた。  なんでだろ、と思っていたら、ドラゴンさんが急に人間の姿に変化した。寄りかかるものが急になくなったので後ろに倒れそうになる。  ドラゴンさんの魔法は基本的にまやかしの様なものであるらしく、特に派手な爆発も煙もなく、すっと見た目が変わる。そして、それがまやかしだとわかっている人の目には効果が薄れ、不自然に映るらしい。だからドラゴンさんの人間の姿は見ていて不思議な気分になる。そしていつも変化が突然なのでとても驚く。  座ったまま両手を地面につけ、立ち上がった人間のドラゴンさんを見上げた。  「びっくりした。急にどうしたの?」  ドラゴンさんは返事せずに(私も特に返事は期待していなかったが)自分の人間の姿を見回して、なぜか満足げに頷いた。そして、私から数歩離れたところに座った。  本当に何がしたいのでしょう、この人は。……人じゃないけど。  「お前、なんでここ来たんだ?」  突然聞かれた。  「聞きたいなと思って」一応正直に答える。「私のこと、なんで家に閉じ込めておくの?」  「……お前が知る必要はない」  「前もそれ言ったけど。やっぱり教えてくれないの?」  ドラゴンさんの方を向くと彼は目を逸らしてあぐらをかいている自分の足を見つめていた。  「ああ」  「そっか」  結局、こうなっちゃう。  なんか、追求するのが嫌になってしまった。  だって、私はこのドラゴンにまだ打ち解けてもらえてないのだ。仲良くなれたつもりなのに。打ち解けてないから、下手にしつこく追求して嫌われてしまうのが怖くて、これ以上何も聞けない。  あんなに聞く気満々だったのに、馬鹿みたいだな。  でも、近づこうとして拒絶されるくらいなら、気になることも知りたいことも我慢して前と同じように暮らすのが一番だ。  「じゃあ、私帰るね。服の欲しい妖精さんまだいっぱい居るみたいだし」  立ち上がり、森の方に歩き出す。でもやっぱりこのまま終わるのも少し虚しいので、振り返って、  「明日はいつもみたいに来てよ。寂しいから」  とつい本音を言った。  ドラゴンさん、驚くかな、照れるかな、と彼の表情を窺った。
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