第四章 ドラゴン

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 でも、予想に反して、私を見ている彼の顔はなぜか今にも泣き出しそうな、でもそれが悲しみからか喜びからかどうか分からないような表情をしていた。  どういう心情なの、それ、と言おうとしたらドラゴンさんが立ち上がってこっちに突進してきた。  ドラゴンさんが私にぶち当たる。「ごふぇ」と変な声が出て予想外の衝撃で後ろに倒れそうになるが、ドラゴンさんの腕に支えられる。ほんの少し焦げた木のような匂いがした。  抱きしめられている、ということを理解するのに少し時間がかかった。  その圧力からか、驚きと緊張からか、うまく息ができない。  「お前は、ちゃんと……」  ドラゴンさんが言った。  「…………」  続きが来ない。  いや、このまま黙られるとすごく反応に困る。そこは「守るから」とか少し照れくさいことをいうところではないのだろうか。知らないけど。別に期待してしまったわけではないけど。ドラゴンから騎士のような言葉を期待するのは少し見当違いだったか。  ドラゴンさんは何も言わないままだった。  なんだこの状況。  でもある意味色々なことを納得した。  「…………」  私も何も言わないまま、息を吸って吐くと、自分の両腕をゆっくりあげて相手の背中を掴んだ。  人に抱きつくのも、抱きしめられるのも、初めてのような気がする。新鮮でよくわからないが、なんか落ち着く。  でもそのままだと私が気まずい。  「そこは『お前は俺が守るから』とかかっこいいこと言うところじゃないの?」  少し間があった。自分の発言を悔やみ始める。  「そうだ」  はっきりと賛同してもらって少し気分が楽になった。  いや、でも。  「守る」って、何から?  疑問を口に出そうとした。  が、さっきのドラゴンさんの表情と声色を思い出して、もうこの話題は持ち上げないでいよう、と決めた。もし彼が言いたくないのなら、無駄に彼を苦しめることはない。  そうだ、ドラゴンさんに聞かなくても真実を知る方法はある。  自分で突き止めてしまえば良い。
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