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第六章 ドラゴン
「ドロテア……?」
後ろから声がした。
「あ、お頭!」
二人の男が同時に言った。
目眩をどうにか振り切って後ろを向くと、焦げ茶色の髪を振り乱した少女が立っていた。とても驚いた顔をしている。いや、「驚いた」は少し違うかもしれない。その表情から伺える感情はもっと恐怖に近い物だった。
私も似たような表情をしていると思う。
「ミシュカ・ロジュノスト……」
と呟く。
ミシュカ・ロジュノストは私を見て言った。
「なんで生きてるの」少しづつ、私に近づいてくる。「あの時、確かに殺したはずなのに」
そして、私の瞳を見て動きを止めた。
「……まさか、その目の色ーードラゴンの魔法で復活したの?運の強いお方ね」
男二人が不思議そうにしている。
「ミシュカさん、こいつ、知り合いなんすか?」
ミシュカはため息をついて、腕を組んだ。
「いや、知り合いっていうか……ドロテア王女様よ。前に、私達で死体を処分したでしょ?」
「え、ドロテア王女?この娘が?」
男二人が私を見つめる。私から反応を求めているようだ。
私は何も言えず、目の前にいる本物のミシュカを見つめた。
そう、私はミシュカじゃない。
私はドロテア。
この王国の王女で、前にここに来たことがある。そして、その時、侍女のアメルを庇ってバハルと名乗る男の剣で斬られ、死んだ。
全部、思い出した。
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